麻婆豆腐(四川風豆板醤豆腐と挽き肉の辛煮込み)
豆板醤の唐辛子の辛さに、花椒粉の舌がしびれる刺激が重なります。四川料理で「麻」と呼ばれるこのしびれが、麻婆豆腐をほかの辛い豆腐の煮込みと分けています。柔らかい豆腐は外側だけに赤茶色のソースがしみ、中はなめらかなままです。白いご飯にかけるとソースが米粒の間に入り込みます。
豆板醤の唐辛子の辛さに、花椒粉の舌がしびれる刺激が重なります。四川料理で「麻」と呼ばれるこのしびれが、麻婆豆腐をほかの辛い豆腐の煮込みと分けています。柔らかい豆腐は外側だけに赤茶色のソースがしみ、中はなめらかなままです。白いご飯にかけるとソースが米粒の間に入り込みます。
パリパリに焼いた大きな米のクレープを割ると、マスタードシードとカレーリーフが香り、ターメリックで色づいたほっくりしたじゃがいもが出てきます。南インドでは朝食から夕食まで食卓に上り、ココナッツチャツネと、豆と野菜の煮込みであるサンバルが添えられます。米とウラド豆の生地の酸味とパリッと感は、発酵の進み具合で決まります。
タイカレーの中でも辛さは控えめにとどまり、甘みと塩気が前に出ます。ルーツはタイ南部のムスリムの食文化にあり、シナモンやカルダモンを思わせる温かい香りがグリーンカレーやレッドカレーとは違う印象を生みます。鶏もも肉と一緒に煮る大きく切ったじゃがいもが、煮るうちに角から崩れてソースにとろみがつき、ピーナッツの歯ごたえが加わります。
客家料理らしく器ごと蒸した豚バラを皿にひっくり返すと、醤油色の肉が整然と並び、その下に高菜漬けが敷かれた形で現れます。1時間蒸す間に、高菜漬けの塩気と発酵の香りが豚肉にしみ込みます。
耳を落とした食パン二枚でエビのあんを挟んで揚げると、カリッとしたパンの中からぷりっとしたエビが出てきます。エビはすり身にせず包丁の背で粗くたたくだけなので、かむと粒が感じられます。
合いびき肉のハンバーグのような肉だねを粗いパン粉の衣が包み、切ると閉じ込めていた肉汁があふれます。東京では町の肉屋が毎日揚げてショーケースに並べ、揚げたてを袋ごと持って道で食べる光景が昔からあります。
甘酢で締めた銀色のこはだに黄色い粟の粒がまとわりつき、間に赤唐辛子がのぞきます。江戸のおせちで、成長とともに名前が変わる出世魚のこはだは先々の繁栄を、粟は豊かな実りを表します。冷蔵庫で数日寝かせ、甘酢の味が中まで入ってから重箱に詰めます。
黒い衣という名の通り、豚ロースの表面がつやのある黒ごまの層で覆われて仕上がります。琉球王朝の宮廷料理で、焼かずに蒸すため、油が出るまで炒ってすったごまが焦げずに脂の少ないロースを包みます。
ほくほくのじゃがいも、薄くさくっとした衣、甘じょっぱい味噌だれが順に感じられる、埼玉県秩父の軽食です。農作業の合間の小昼飯として食べられてきた一品で、たれを全体に絡めず上からかけてカリッとした面を残します。
シナモンや八角を含む五香粉の香りが醤油の煮汁に移り、同じ茶色の煮込みでも醤油だけの煮物とは香りがまるで違います。タイの家庭で豚肉とゆで卵を一緒に長く煮込む料理で、温かいご飯に煮汁をたっぷりかけて出します。
外側の層はパリッと割れ、切るとカレー粉で炒めた牛ひき肉と卵がしっとり詰まっています。油を塗った手で紙のように薄くのばした生地に具を包み、四角く折って焼くマレーシアの具入りパンで、具のないロティ・チャナイと違ってこれだけで一食になります。切り分けてカレーソースやチャツネにつけて食べます。
切ると断面に細かく刻んだ青菜とにんじんが散り、緑と橙の点が見えます。宮崎県椎葉村で貴重な大豆を節約しつつ豆腐を増やした知恵で、春は菜の花や三つ葉、秋から春は平家かぶの葉を入れて季節の色を楽しみました。ここでは平家かぶの葉の代わりにからし菜も使えます。仕上がった豆腐は水にさらさず、すぐ切って醤油や柚子味噌で食べます。
若いヘチマが煮えるうちに出す澄んだほの甘い汁が赤味噌と合わさり、炒め物よりしっとり、汁物より濃い一皿になります。ナーベーラーはヘチマ、ンブシーは味噌で煮る料理法を指す沖縄の言葉で、夏の家庭料理として豚バラと手でちぎった島豆腐を合わせます。水は足さず、ヘチマの汁に豚のゆで汁を少し加えるだけです。
火を使わず、冷たいあじの食感に味噌の塩気と、しょうが、長ねぎ、しその香りがそのまま重なります。千葉県房総半島の漁師料理で、皿までなめたくなるほどうまいという言葉が名の由来と伝わります。包丁二本でたたくうちに魚の形がほぼ消え、刃を持ち上げるとふんわりした粘りがついてきます。
片栗粉をまぶしてカリッと揚げたエツを熱いうちに野菜入りの酢醤油へ漬けると、魚は味を素早く吸い、細切りの野菜はしゃきしゃきした歯切れを保ちます。エツは福岡県筑後地方で5月から7月の短い漁期にだけとれる魚で、小骨が多いため身に細かく切り込みを入れます。冷やして食べる夏のおかずです。
酒粕に漬けた奈良漬けの香りと歯ごたえが、甘辛く煮たぜんまい、かんぴょう、しいたけ、つきこんにゃくの間で生きてきます。単独では強い漬物の味も、たくさんの野菜と油揚げに分かれることでやさしくなる和え物です。奈良県の日常のおかずで、冷ましてから食卓に出します。
へたむらさきなすは皮が薄く中のやわらかい加賀の小なすで、丸ごと長く煮ても形が崩れません。金沢では夏にこのなすに十字の切り込みを入れ、澄んだだしと薄口醤油で煮て、粗熱を取るか冷やして食べます。
インド南西部カルナータカ州の海沿い、マンガロールで作られるこの米のクレープは、カンナダ語で「水のドーサ」という名のとおり、生地を水に近いほどさらさらに溶きます。発酵させないためマサラ・ドーサのような酸味はなく、浸水した米と少量のココナッツの素朴な味だけが残ります。熱したフライパンの縁から生地を回し入れると、小さな穴が無数にあいたレース状に広がり、片面だけ焼いて裏返さずに取り出します。
最後に回し入れる酢が甘辛い根菜の煮物に酸味を重ね、れんこんにはしゃきっとした食感が残ります。茨城県水戸周辺のおかずで、煮てから和える「煮て和える」が名の由来という説があります。正月や冠婚葬祭に多めに作って翌日に食べてきた料理で、今も冷蔵庫で一晩なじませてからが食べごろです。
名前は肉が先でも鍋の主役は豆腐で、薄切り牛肉と九条ねぎが甘めの醤油の煮汁の中で脇を固めます。京都の冬の家庭料理で、葉の内側のぬめりは洗い流さず、九条ねぎは最後の2分だけ煮て甘みと香りを残します。
牛薄切り肉とじゃがいも、玉ねぎ、にんじん、しらたきを、だしと醤油、みりん、砂糖で甘辛く煮含める、日本の家庭の食卓によく上る煮物です。明治期の海軍士官がイギリスのビーフシチューを国内で手に入る材料で再現しようとしたという説があり、とろみのない醤油味の煮物になったのはそのためだとされます。
豚ひき肉に混ぜたキャベツが水分を出し、ふんわりした皮の中の具がぱさつかずしっとり仕上がります。具は生姜をきかせて醤油とごま油で味をつけ、皮には砂糖を少し入れてほんのり甘くします。
豆麹を長く熟成させた赤い豆味噌が、煮汁に濃いうま味とほのかな酸味、軽い渋みを与えます。愛知県で味噌煮とも呼ばれ、八丁味噌に代表される豆味噌の文化から生まれた日常の煮物です。大根、にんじん、ごぼう、里芋、こんにゃく、油揚げを一度にたくさん煮る点は同じでも、汁を多めに残して鍋のように食べる家もあれば、煮詰めて煮物にする家もあります。
里芋から出るでんぷんだけで、汁にほんのりとろみがつく新潟の煮物です。干し貝柱と干ししいたけの戻し汁を土台に、里芋、たけのこ、にんじん、こんにゃく、かまぼこ、ぎんなん、塩鮭を同じくらいの大きさにそろえて煮ます。正月や婚礼、法事や葬儀に大鍋で作り、温かくても冷たくても食べ、上にいくらをのせます。