せんべい汁
鶏肉とごぼう、野菜を煮た醤油味の汁に南部せんべいを手で割り入れると、縁は汁を吸って柔らかくなり、中心はもちっと残ります。青森県八戸地方では、こうしてせんべいを汁に入れて食べてきました。おやつ用のせんべいは汁の中で崩れやすいため、汁用の南部せんべいを使います。
鶏肉とごぼう、野菜を煮た醤油味の汁に南部せんべいを手で割り入れると、縁は汁を吸って柔らかくなり、中心はもちっと残ります。青森県八戸地方では、こうしてせんべいを汁に入れて食べてきました。おやつ用のせんべいは汁の中で崩れやすいため、汁用の南部せんべいを使います。
身の厚いところに浅く切り込みを入れておくと、メバルの中まで煮汁が届きます。大根を先に縁が透き通るまで煮てから魚をのせるのは、硬い大根のまま魚を入れると大根は生煮え、身はぱさつくためです。
外側には藁の筋が残り、中は崩した豆腐が再び固まるときにできた小さなすき間に甘辛い醤油の煮汁がたまっています。なめらかな煮豆腐と違って断面が粗く、そのすき間が一晩寝かせる間に味を吸い込みます。茨城県中央部では肉が手に入りにくかった頃、村人が藁を持ち寄って大鍋で作り、婚礼や葬儀の膳に出しました。
身を取ったあとの頭、中骨、皮、肝、白子や真子まで、鱈一尾を一つの鍋で煮て濃いだしを取ります。じゃっぱは津軽の言葉で捨てるところを意味しますが、青森の津軽ではこの部分で冬の味噌汁を作ってきました。仕上げにつぶして溶かす肝が汁にやわらかなコクを加え、新鮮な白子があればごちそう扱いです。鱈は津軽で年取り魚とされ、年の瀬に大きな鱈を丸ごと買って雪道を引いて帰る光景から、鱈正月という言葉も生まれました。
有明海沿岸で「くちぞこ」と呼ばれる舌平目を、酒、醤油、みりん、砂糖をたっぷり合わせた煮汁で短く強く煮ます。身が薄くすぐ火が通るので、じっくり煮る煮魚とは違い、火が通ったらすぐ引き上げると身がふっくらします。魚を出したあとの煮汁でごぼうを煮て添えます。
山形の内陸では、秋に河原へ集まって大鍋を囲む芋煮会が毎年開かれます。牛肉は里芋に串がすっと通ってから入れます。最初から一緒に煮ると肉が硬くなり、アクも増えます。
握りこぶしほどの豚肉団子4個を白菜の上にのせ、淡い醤油味のスープでゆっくり煮ます。揚げないぶん、表面までしっとり柔らかく仕上がります。鍋底に敷いた白菜は肉団子が直火に当たるのを防ぎ、肉汁を吸ってとろりと煮えます。
「どんがら」はタラの頭や骨の多いアラを指します。山形県庄内地方では産卵期のマダラを身から肝、白子や卵まで一つの鍋に入れ、肝が溶けた味噌汁はこってりと香ばしくなります。家庭では、胆のう、えら、腸を専門店で除いた鍋用セットで作ります。
客家料理らしく器ごと蒸した豚バラを皿にひっくり返すと、醤油色の肉が整然と並び、その下に高菜漬けが敷かれた形で現れます。1時間蒸す間に、高菜漬けの塩気と発酵の香りが豚肉にしみ込みます。
焼かない角餅を澄んだ醤油仕立てのだしで煮ると、表面はなめらかに、中はやわらかく煮えます。豆味噌の土地として知られる愛知ですが、この雑煮には味噌を使わず、汁の色が明るく仕上がります。尾張の伝統野菜もち菜は小松菜に似ていますが、より柔らかく甘みがあり、餅がやわらかくなってから短く煮ると緑がきれいに残ります。上にのせるのは削り節だけで、具の味がそのまま伝わります。
ほくほくのじゃがいも、薄くさくっとした衣、甘じょっぱい味噌だれが順に感じられる、埼玉県秩父の軽食です。農作業の合間の小昼飯として食べられてきた一品で、たれを全体に絡めず上からかけてカリッとした面を残します。
片栗粉をまぶしてカリッと揚げたエツを熱いうちに野菜入りの酢醤油へ漬けると、魚は味を素早く吸い、細切りの野菜はしゃきしゃきした歯切れを保ちます。エツは福岡県筑後地方で5月から7月の短い漁期にだけとれる魚で、小骨が多いため身に細かく切り込みを入れます。冷やして食べる夏のおかずです。
名前は肉が先でも鍋の主役は豆腐で、薄切り牛肉と九条ねぎが甘めの醤油の煮汁の中で脇を固めます。京都の冬の家庭料理で、葉の内側のぬめりは洗い流さず、九条ねぎは最後の2分だけ煮て甘みと香りを残します。
里芋から出るでんぷんだけで、汁にほんのりとろみがつく新潟の煮物です。干し貝柱と干ししいたけの戻し汁を土台に、里芋、たけのこ、にんじん、こんにゃく、かまぼこ、ぎんなん、塩鮭を同じくらいの大きさにそろえて煮ます。正月や婚礼、法事や葬儀に大鍋で作り、温かくても冷たくても食べ、上にいくらをのせます。
桜えび漁を終えて沖から上がった漁師たちが、浜で囲んだ鍋が名前の由来です。静岡県由比の味で、生の桜えびのうま味が甘辛い割り下に移り、大きく切った木綿豆腐がその汁をじっくり含みます。桜えびと豆腐、ねぎを一緒にすくい、熱いうちに食べます。
スズキを丸ごと蒸して頭から尾まで一皿にのせ、箸で身をほぐしながら食べます。醤油と砂糖を合わせたたれは魚の味を隠さない程度に軽くかけ、ねぎのせん切りの上から熱した油を回しかけて仕上げます。
飛騨では、冬に塩漬けしたかぶらの葉が春になって酸っぱくなると、煮干しと醤油、みりん、酒で汁気がほぼなくなるまで煮ました。くもじは宮中で漬物を指した古い言葉に由来するといわれます。水を何度か替えて塩を抜きますが、塩気は少し残しておきます。抜ききると醤油の味しかしなくなるからです。
秋に生の筋子が出回ると、北海道では粒を一つずつほぐし、煮立てて冷ました酒醤油に漬けておきます。味がしみても粒の皮は張ったままで、噛むとぷちっとはじけて塩気が広がります。
背開きにした鯛2尾に、野菜とぎんなん入りの甘辛い卯の花を詰め、丸ごと蒸し上げます。石川県加賀の祝い料理で、腹を向かい合わせて盛る姿から婚礼の膳にも出されてきました。取り分けると、淡白な鯛の身と魚の汁を吸った卯の花が一緒に皿に移ります。
レバー、砂肝、はつに、未成熟卵黄のきんかんと卵管のひもを加えた五種類のもつを、少量の甘辛いたれで一気に照り煮にします。山梨県甲府の名物で、捨てられていた部位を生かそうと、甲府のそば店で生まれたと伝えられます。たれは煮汁として残さず、鍋肌に膜が張るほど煮詰めてもつの表面にからめます。きんかんとひもは一般的なもつのパックにはあまり入っておらず、専門の精肉店で手に入れます。
岐阜県郡上では、冬に漬けた白菜漬けが酸っぱく塩辛くなりすぎると、水に浸けて塩気をいくらか抜き、赤味噌の汁で煮直して食べたと伝わります。ねぎ、なす、しいたけ、こんにゃくも一緒に入れ、白菜がくたくたになって汁が少し残るくらいまで、ごく弱火で煮ます。
春のたけのこを割ってゆで、天日で干した三角形のかけらがするめに見えることから、山のするめと呼ばれます。熊本県ではこれを戻して農繁期の食事や球磨地方の祭りの精進料理、酒の肴に使ってきました。濃いだしと薄口しょうゆでじっくり煮たたけのこは柔らかく弾力があり、煮汁がほぼなくなった頃に乾いたまま加えるきくらげが残りのたれを吸って、こりこりした歯応えを添えます。
開いて骨を抜いたどじょうとささがきごぼうを甘辛いだしで煮て、溶き卵でふんわりとじる東京の浅い鍋です。丸ごとのどじょうを使う丸鍋と違って開いた身を使い、ごぼうを先に煮て土の香りを汁に移します。食べる直前に粉山椒を振り、汁、ごぼう、どじょう、卵を一緒にすくいます。
大分県の漁師の料理で、刺身用のブリを煎りごま、醤油、砂糖、酒の冷たいたれに10分だけ漬けます。名前は沖縄(琉球)の漁師に教わったからとも、ごま和えの利休和えがなまったともいわれます。冷たいまま出すほか、熱いご飯にのせ、お茶をかけてお茶漬けにもします。